『満ち足りた家族』感想―静かに崩壊する家族の秘密

家族の秘密が崩壊を招く―ホ・ジノ監督の静かな衝撃

ナカデミー賞ノミネートおめでとうございます!今日はシネ・リーブル池袋で韓国映画『満ち足りた家族』を観ました。

兄は金と権力を重視し、弟は道徳を信じる。対照的な兄弟が、それぞれの家族とともに定期的に会食する関係。しかし、ある事件が起こり、その関係が一気に崩れていく。物語は淡々としているが、静かに心を締めつける。胸糞悪かったです、良い意味で!

登場人物の誰もが、自分なりの正しさを持って行動しているのに、それがかえって関係を壊していく。その過程があまりにもリアルで、目をそらしたくなるほど苦しい。

韓国映画特有の、静かで切ないピアノのメロディが似合う映画でした。淡々としたシーンの中で、感情が少しずつ滲み出してくるような感覚。こういうのは上手いよね。

印象に残ったポイントランキング

第3位:圧倒的なリアリティ

過剰な演出はなく、どこかで実際に起きていそうな話として描かれる。それがかえって恐ろしく、後味が悪い(良い意味で)。静かに進んでいくのに、気がつけば心が重くなるような感覚。登場人物たちの何気ない会話すら、どこか緊張感が漂っている。

第2位:キャストの演技

ソル・ギョングはいつも通りの安定感。チャン・ドンゴンは久々の映画出演ながら、繊細な演技で魅せた。妻役のキム・ヒエとクローディア・キムも、それぞれの立場の複雑さを見事に表現していた。誰もが「正しい」わけではなく、それでも何かを守ろうとする姿が胸に刺さる。親だもの。

第1位:善悪の境界が揺らぐストーリー

兄弟の対比はわかりやすいが、単純に善と悪に分けられる話ではない。家族を守るための行動が、正義なのか、それとも自己保身なのか。登場人物の決断が、観る側の価値観を試す。

鹿の死が描かれる。昔から鹿は平和な存在とされ、調和と幸福の象徴とされることが多い。『新感染」以降、韓国映画の鹿に目が行くようになった。この映画でも、鹿の死が一つの転換点になっていた。単なる偶然の演出ではなく、家族の崩壊や運命の歯車が狂い始める暗示のように。

まとめ

派手な展開はないが、じわじわと追い詰められる感覚が残る映画だった。特に家族を持つ身としては、登場人物の葛藤が他人事とは思えない。後味は悪いが、それこそがこの映画の力ですね。