映画『八犬伝』レビュー:滝沢馬琴と八犬士が織りなす時代を超えた物語
2024年版『八犬伝』がナカデミー賞にノミネートされるなんて、本当に素晴らしいです! 平凡社の『水滸伝』や角川映画・真田広之・薬師丸ひろ子主演の『里見八犬伝』を映画館で鑑賞している自分にとって、今回の映画は別格でした。八犬士の運命が描かれる中に、滝沢馬琴自身の人生や創作への執念が絡むユニークな構成。ここでは、観終わって特に印象に残ったポイントをランキング形式で振り返ります。
第三位:虚実を交錯させた構成で八犬伝に奥行きが生まれた
『八犬伝』は、単に八犬士たちの戦いを描くのではなく、滝沢馬琴の創作への執念と葛藤が交錯する構成が秀逸でした。もしストレートに『南総里見八犬伝』の物語だけを描いていた映画ならば、普通に「スーパー戦隊もの」のような雰囲気になってしまったかもしれません。しかし、現実の馬琴の苦悩が背景にあることで、物語が単なる勧善懲悪ではなく、人間の情熱や執念が浮き彫りにされていました。この斬新な構成には、やはり感服するばかりです。
第二位:馬琴・北斎・鶴屋南北が一堂に会するシーン
役所広司が演じる滝沢馬琴、内野聖陽の葛飾北斎、そして鶴屋南北という、江戸時代を代表するクリエイターたちが一堂に会するシーンが見どころでした。劇中では、この三人が『東海道四谷怪談』について語り合う場面があり、まさに当時の「クリエイター同士のぶつかり合い」という熱気が感じられました。互いに刺激し合うやり取りが時代を越えてリアルに迫ってきました。自分も「先生」と呼ばれてみたいと思ってしまいました。
第一位:馬琴の執念と、代筆に挑むお路の感動的なシーン
日本史を専修していた身として、滝沢馬琴が視力を失った後に息子の妻・お路が代筆を担い、物語を完結させたエピソードは有名でしたが、実際に映像で見るとその過酷さがよく伝わりました。お路は文字に詳しくない中、視力を失った馬琴が手探りで文字を教えながら物語を紡ぎ続けるという、想像を超える努力と集中力には圧倒されました。馬琴が思い描く言葉を、ひたむきに書き写すお路の姿には、二人が成し遂げた偉業の重みがリアルに伝わり、改めて「八犬伝」という作品の背後にある情熱と執念を感じました。そして、完成した『八犬伝』が、現代にまで読み継がれこうやって映画『八犬伝』として現代人が映画館で鑑賞できることに深い感動を覚えました。